みなさん!この世の中では、親友でさえあなた裏切り敵となることがある。

 愛情こめて育てた息子や娘も、深い親の恩をすっかり忘れてしまうかもしれ

ない。

 あなたが心から信頼しているもっとも身近な愛する人も、その忠節をひるが

えすかもしれない。

 富はいつか失われるかもしれない。最も必要なときにあなたの手中にある

とは限らない。

 名声はたった一つの思慮に欠けた行為によって瞬時に地に落ちてしまうこ

ともある。

 成功に輝いているときにはひざまずいて敬ってくれた人が、失敗の暗雲が

あなたの頭上を.かげらせたとたん豹変し、悪意のつぶてを投げつけるかもし

れない。

 こんな利己的な世の中で、決して裏切らない恩知らずでも不誠実でもない

絶対不変の唯一の友はあなたの犬だ。

 あなたの犬は富めるときも貧しきときも、健やかなるときも病めるときもつね

にあなたを助ける。

 冷たい風が吹きつけ雪が激しく降るときも、主人のそばならば冷たい土の

上で眠るだろう。

 与えるべき食べ物が何一つなくても、手を差しのべればキスをしてくれ、

世間の荒波に揉まれた傷や痛手をやさしく舐めてくれるだろう。

 犬は貧しい民の眠りをまるで王子の眠りのごとく守ってくれる。

 友が一人残らずあなたを見捨てて立ち去っても、犬はあなたを見捨ては

しない。

 富を失い名誉が地に落ちても、犬はあたかも日々天空を旅する太陽の

ごとく、変わることなくあなたを愛する。

 例え運命の力で友も住む家もない地の果てに追いやられても、忠実な犬は

あなたと共にあること以外は何も望まず、あなたを危険から守り敵と戦う。

 すべての終わりが来て死があなたを抱き取り、骸(むくろ)が冷たい土の

下に葬られるとき、人々が立ち去った墓の傍らには前脚のあいだに頭(こう

べ)を垂れた気高い犬がいる。

 その目は悲しみに曇りながらも油断なくあたりを見まわし、死者に対して

さえも忠実さと真実さに満ちている。


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「犬の愛に嘘はない」
ジェフリーMマッソン著より抜粋