F甲斐犬とともに暮らして

   甲斐犬愛護会中巨摩支部長(当時)
       中込遼平氏
 昭和20年(1945)の冬、私のペス号(昭和19年天然記念物指定犬)の孫犬を、

山梨県韮崎市のある郵便局員に送った。心のやさしい局員は、我が子のように

かわいがった。しかし、ある雪の日、風邪が元で局員は帰らぬ人になった。犬は

その後、亡くなった主人の墓にうずくまる様になって、家人が連れ帰っても、その

つど墓に戻ってしまい、そこを離れようとしなかった。家人の運ぶ食事もろくに

食べなかったので、とうとう一ヶ月後には主人のいる天国へ旅立ってしまった。


                    
                    


 
 昭和30年(1955)に、メリー号(昭和28年天然記念物指定犬)の仔を、山梨県

北巨摩郡穂足駐在所に送った。三井巡査は、この犬をつれて頻発するロッカー

破りの夜間警戒パトロール中に、農協付近にさしかかった。このとき犬が急に尾を

振りはじめ、きっとした態度になった。何事かあると直感した巡査は、この農協に

近寄って、ここに居合わせたロッカー破りを逮捕した。しかし、捕まえたもの夜中

でもあったので応援を呼ぶべく消防団長に、この件を紙片に書いて犬の口にくわえ

させて走らせた。これは前もって訓練していたので犬は一散走りで団長宅に行き、

入り口の戸を両前足で激しくたたき、家人を起こして三井巡査に協力した。

                        
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