のぶとらコラムY  平成17年(2005)10月17日



最強犬は土佐犬か、
アメリカンピットブルなのか

川上宗薫(かわかみそうくん)
「闘犬記・アメリカンピットブルテリア」
昭和60年(1985)刊 新潮社
 官能小説で名をはせた川上宗薫(1924〜1985)が闘病生活の中で書いた

闘犬記(ノンフィクション小説)。

 女遍歴も多彩だったが犬遍歴もすごい。初期はとにかくでっかい犬が好きで

飼った犬は例えばボクサー(烈)やグレートデン(リピート飼いで、いづれも

名は烈だった)など。

 時にはグレートデン♂とセントバーナード♀をかけあわせて、自ら最大の犬つくり

まで試みたらしい。 でも奇怪な?そのMIXの仔犬はできなかったそうだ。

(セントバーナード嬢の子宮の病気が原因だったという)

 大物の最後に行き着いたのはイングリッシュマスティフ(ダイ)であった。

 晩年はことさら強い犬を求めた。「世界最強といわれた土佐闘犬より、

その体重の二分の一にも満たない20kg程のアメリカンピットブル(テリア)の

方が強い。」という話を聞いて川上のこだわりの血がうずいた。

 自らピットブル(朗)を飼い、さらに高じてアメリカからピットブル(Q太郎)を入れて

まで土佐犬へあくなき挑戦を試みたというはなしである。

 土佐とピットでは闘い方のルールが違い、土佐が闘技だとすればピットはデス

マッチ(死闘)に近い。 ピットの場合は闘犬終了後に犬が死ぬのもめずらしくない

というのである。 ピットに秘められたゲイムネス(やる気)に一端スイッチがオン

してしまったら、自分の体力の限界を超えても闘魂が止まらなくなるんだそうだ。

 これが土佐を初めとする他の犬種を寄せ付けない大きな理由のひとつである。

 土佐とピットで闘わせると最初の5分は土佐が優勢だが10分15分たつとピットが

盛り返し、潜り専門・小型ゆえに敏捷で、かつ石頭 (ヘルメットを被っているが

ごとく)なので、ピットにとっては相手犬の体高、体重は闘いには関係ないのだ。

 ピットはその闘う本能で精魂果てるまでやってしまうのだから相手犬の飼い主に

とっては、そこでタオルを投げざる(謝りを入れる)を得なくなってしまうのだ。














 川上は自ら飼った闘犬アメリカンピットブルをこう評してる。

@エクソシストA悪魔のような悪戯犬Bふざけかたが異常
Cテリア系なので無駄吠えするD体臭は強烈



 (注)アメリカンピットブルテリアとアメリカンスタフォードシャテリアの違い

小生が調べた範囲では同一犬種だと思われる。 単に所属団体で犬種名が違うということだ。 

アメリカンピットブルはUKCで、アメリカンスタフォードシャはAKCである。

 前者には闘犬目的が入り、後者は闘犬は認めないのでショー主体だそうだ。

 それでAKC系列のJKCにはアメリカンピットブル(テリア)という犬種名がない。

 もちろん、豚顔のピットブル(テリア)とは別物だ。

アメリカンブルドッグとは

 
川上のピットブルQ太郎は、「闘犬記」の挿入写真をみるとカラーはブラックで顔つきは

アメリカンピットブルというよりアメリカンブルドッグ顔だ。耳はローズイヤーである。

 アメリカンブルドッグは日本で一般的な英ブルドッグとは違い、顔は似ているが足も長く

尾も長い。体型は大型で体重は30〜40kg位ある。

 この犬種は、かって英国で牡牛と闘ってきた当時のままの姿気質のブルドッグが16世紀に

アメリカに移住民とともに海を渡った。

 つまり、今や温和に改良された英ブルドッグの原型の形の犬だったといえよう。

 これがアメリカの闘犬愛好家の手により他犬種と交配され、小型化(20kg位)されてファイター

アメリカンピットブルに形成されたいったという。


                                                                                                                                                                      イノシシとAピットブル(坂本氏提供)       



 Q太郎(川上の飼ったアメリカンピットブル)は狂気に近い
ゲイムネスの魂を持っていた。ふざけていても、ふざけぶりが
荒くなり、私を見る彼の眼の色が変わってくるのに怯えてた。
「やっぱり、こわいよこの犬」
 飼って5年になるというのに「こんなの犬か」と思った。
 ピットブルの存在を知らなければ土佐犬を飼ったろうが、
小さなピットブルに敗れた土佐犬の姿を見てから、今後どんなに
大きい、いかつい面相の犬を飼って、たとえその犬になつかれ
ようと満足できなくなってしまった。
 ピットブルの試合をみるとこわくなってきたよ。けんかの
レベルが高くなってくるにつれ死ぬ犬が増える。
 土佐犬のけんかとは全然違う。弁当食いながら暢気に見るって
もんじゃないよ。
 ピットブル飼いのなかにはピットブルを認知させて一般的に
しようとするところもあるが、知れば知るほ程アンダーグラ
ウンドに徹すべきじゃないかという気持になってきた。
 あれはこっそり愛好家だけの間で行われる麻薬売買のような
もんじゃないかな。
 ピットブルのことも大体わかったからピットブルにかわる犬
も飼いたくない。 しかしピットブルは飼うと油断ならない。
 私は強いピットブルを知った為、他の犬は飼おうと思わなく
なってしまったし、私にとってアメリカンピットブルが
『禁句』の色合いを
帯びてくるだろうとは夢にも思わなかった。
                    (本文より抜粋)







            画像はいずれも坂本氏提供





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画像は岡山県の坂本氏提供

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