のぶとらコラムU
2005.7.27
白い甲斐犬と高安犬物語
幻の高安犬は甲斐犬がルーツ?
三鷹市在住の甲斐犬愛好家Kさんからメールをいただいた。
なんと白い甲斐犬を手に入れたそうだ。両親は血統書付きの甲斐犬だが
白色は甲斐犬の基準外なので血統書の発行はしてもらえないという。
しかし、大昔(708年〜714年)の甲斐犬は三毛犬、四毛犬だったらしい。(注@)
三毛猫の毛色から想像すれば白ベースに茶、黒色混じりといったところなのか。
絶滅した山形県の優秀なマタギ犬「高安犬」は甲斐犬が、その原種だといわれて
いる。
その高安犬の毛色は白だとされている。(注A)
古い話すぎて確認のしようもないが、甲斐の地犬を「甲斐犬」として天然記念物に
申請した当時に、たまたま白い地犬が見つからなかっただけではなかろうか。
(柴犬カラーの甲斐犬は当時存在していた。)
21世紀の現在に黒い系統の甲斐犬から忽然と古代の?白い甲斐犬が生ま
れてくることにロマンを感じるのは小生だけではあるまい。
注@「犬の宮」(山形県) 幻の高安犬伝説
和銅年間(8世紀初頭)に山形県高安地方の村に役人に化けた魔物たちが
やってきて年貢として春と秋に子供を差し出せと無理難題をいってきた。
村人が困りきっていると、道にまよった旅の座頭(目の不自由な僧侶)が
思いがけなくやってきたので、このことを相談した。
座頭は泊まったお堂の中で、たまたま得体の知れない何者かが、
「甲斐の国の三毛犬、四毛犬には決して知らしてはならんぞ」
というひそひそ話しをしていたのを聞いていた。
そこで座頭は村人に指示して甲斐の国から三毛犬と四毛犬をつれてこさせた。
人身御供を待つ役人たちに、この2匹の甲斐の犬を放ったところ大乱闘に
なった。
戦いが治まったところに村人が行ってみると多数の大タヌキや、大ムジナの
死骸が散乱していたというはなしだ。
この犬がのちの高安犬になったそうだ。
注A 参考文献「高安犬物語」 戸川幸夫氏著 新潮社文庫
山形県の勇敢なる熊猟犬「高安犬」は、ついに絶滅してしまった。
「チン」という手負い熊、熊鷹、土佐犬も、やっつけたという最後の高安犬も
フィラリアで病死した。
せめて剥製にしても後世に残そうとしたが剥製屋の技量の低さで失敗してしまい
その姿形は今や知るすべもない。
しかし、戸川幸夫氏によると『高安犬の特徴は白い立派な中型犬で、
ピンと立った耳、犬張子のように張った胸、逞しく巻き上がった尾、
キッと正面を見据える刺すような瞳、悠々と力強く歩いて』
三鷹市のKさんの甲斐犬のご紹介。
縄文甲斐犬を彷彿させるすばらしい白犬である。
舌斑を有し、高いところもすきそうだ。好物が桑の実というのもうれしい。
<参考> 「熊犬物語」 戸川幸夫氏著に、高安犬の毛色について下記の記述がある。
『〜白く、耳の尖(さき)がほんのり薄茶、現存している高安犬の代表的な毛色なのだ』
2005.2.8生 「シロ」 ♂
生後5ヶ月
右の白い甲斐犬は、甲府市の武田神社の近くに住んでおられるかたの愛犬。舌斑もあり性格も甲斐犬そのものだ。両親はもちろん血統書付きの甲斐虎毛犬だ。